研究実績の概要 |
本研究では,平成20年度特定健診の受診状況をもとに前向きコホート調査を行い,レセプト情報を活用した医療費分析により特定健診の受診と医療費との関連について検討することを目的とした.最終年度は平成23年度のデータを追加し,平成20年度の特定健診の受診状況,結果,および保健指導や受療に対する行動により分類した6群について医療費の比較を行った. 健診受診者(2,542名)と未受診者(8,510名)の平成19年度と23年度の比較では,健診受診者の外来医療費は有意に増加(p<0.001)し,共分散分析によりその変化量は未受診者に比べて有意に大きかった(p<0.001).また健診受診者および未受診者の入院医療費はともに有意に減少(p<0.001)し,共分散分析により,受診者の変化量は未受診者に比べて有意に大きかった(p<0.001).保健指導を受けた人(61名)と受けなかった人(19名),および要医療と判定されて受療した人(1296名)と受療しなかった人(110名)との平成19年度と23年度の医療費の比較ではその変化量に有意差は認められなかった.さらに,20年度から4年連続健診を受診した人(1,170名)と4年連続受診していない人(6,053名)での19年度と23年度の医療費の比較では,4年連続受診者の変化量が外来,入院医療費ともに4年連続未受診者のそれよりも有意に大きかった(p<0.001). 健診受診者の医療費変化量が未受診者に比べて大きかったことは,健診受診後一時的に医療費が高くなるという報告と同様に,本研究においても健診を受診し要医療と判断されて受療した人の分が反映されたものと考えられる.健診受診後の医療費の変化を見る場合には,今後はさらに中長期的にこのコホートについて追跡し,健診受診や受診勧奨の重要性について明らかにし,生活習慣病対策の基礎資料となることを期待する.
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