研究課題
研究実施計画に基づき、長期隔離飼育マウスのプレパルスインヒビション(PPI)障害に対するガランタミンの改善作用機序、ならびにpituitary adenylate cyclase-activating polypeptide(PACAP)遺伝子欠損マウスの海馬神経新生について追究した。ガランタミンのPPI障害改善作用にニコチン受容体は関与しないことをすでに見出しているが(Psychopharmacology 2008)、今回、非選択的ムスカリン受容体拮抗薬であるスコポラミン、ならびにM1ムスカリン受容体拮抗薬のテレンゼピンが、ガランタミンのPPI障害改善作用を抑制すること、一方でM1受容体刺激薬であるN-デスメチルクロザピンが隔離飼育マウスのPPI障害を改善することを見出した(Br J Pharmacol 2011)。昨年度、長期隔離飼育マウス脳においてM1ムスカリン受容体機能が特異的に低下していることを見出していることから、隔離飼育といった環境的ストレスによって誘発される感覚情報処理機能障害において、ムスカリン受容体、特にM1受容体の機能調節が密接に関与していることが示唆された。一方で、昨年度PACAP遺伝子欠損マウスの海馬において、インスリン様成長因子1(IGF-1)の発現が特異的に低下していることを見出した。そこで、PACAP遺伝子欠損マウスの海馬神経新生について検討を行ったところ、海馬での細胞増殖能ならびに新生細胞の生存数に、野生型マウスとPACAP遺伝子欠損マウスとの間で違いは見られなかった(Neuroscience 2011)。本成績から、PACAP遺伝子欠損マウスの認知機能やPPIなどの海馬機能の障害に、神経新生の異常は関与していないことが明らかとなった。
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