1. PS2の機能性ドメイン検索 PS2と3次元構造が類似するε-toxinにおいて、PS2と大きく3次元構造が異なるαヘリックス部分が細胞認識に関わると示唆されている。そこで、PS2のαヘリックス部分を欠除あるいは一部配列を他のアミノ酸に置換した変異体を作成し、感受性細胞HepG2へ作用させた。αヘリックスに関連した変異型PS2は、細胞表面へ結合が維持されていた。このことは、この部分においては細胞の認識に関与せず、他の部分が、細胞認識を担っていると予測される。 2. PS2細胞認識に関わる蛋白複合体の同定 PS2立体構造上表面に露出するセリンを、それぞれシステインに置き換え、細胞認識あるいは細胞毒性発揮に影響を及ぼす部位を検索した。今回作成した変異体では、細胞認識および障害性は維持されていた。しかし、S209C、および、S191C変異体では細胞毒性が野生型に対し低下し、細胞障害性に影響を与えた。S209C変異体は、HepG2細胞膜表面上において作用後1時間で野生型では形成されるるOligomer化が起こらなかった。そのため、209番目のセリン周辺にOligomer化に関与する部位が存在すると考えられる。また、この変異体を用いた蛋白複合体検索により、Oligomer化に必要な他の因子の同定が期待される。 3. マウス生体内におけるPS2の細胞認識性 2で作成したS191C変異体を用いて、PS2の蛍光標識を行い、蛍光標識PS2を作成した。PS2感受性細胞であるKLN206細胞をマウス皮下移植した坦癌マウスに、標識PS2を尾静脈投与後、マウス全身での蛍光を実体蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、標識PS2の蛍光は坦癌部分に観察されたが、坦癌部に比べて、他の臓器では蛍光が認められなかった。このことは、PS2の細胞認識は、生体内でも維持されると考えられる。
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