研究課題
生物学的製剤による分子標的治療は、自己免疫疾患の治療に新展開をもたらした。しかし、その優れた有効性の反面、副作用も多様で薬物治療上大きな障壁となっている。重篤な副作用に白質脳症(脱髄疾患)があるが、その発症機構については不明である。本研究は、生物学的製剤によって誘発される白質脳症は、免疫抑制により増加するアデノシンに起因すると仮説を立て、アデノシン増加によるミクログリア変容ならびに中枢神経機能変化、さらにそれらに関わる因子としてフラクタルカイン/CX3CR1シグナルに焦点をあて白質脳症の発症機序を明らかにし、生物学的製剤による中枢性副作用発現の予測・回避策の基盤を提示する。まず、免疫抑制による白質脳症の解析を行うため、マウスに免疫抑制剤であるシクロスポリンを投与し、中枢毒性の発現を行動学的に解析した。シクロスポリン単独の投与において自発運動の抑制が観られた。さらに免疫抑制による中枢毒性の発現がアデノシン増加に起因するか検討するため、アデノシンの細胞内取込を抑制する薬物とシクロスポリンを併用したところ、ふらつき等の運動障害が観察された。そこで、アデノシン増加が免疫抑制による中枢毒性誘発因子であるかについて、LC/MS/MSを用いて血中アデノシン濃度を現在測定中である。また、運動障害がみられたマウスの脳より、白質(脳梁、尾状核等)を含む切片を作製し、Kluver-Barrera染色ならびにミエリンの免疫染色を行い、白質障害を検討中である。
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