がん細胞特異的(未分化細胞特異的)発現ベクターの構築 前年度において癌細胞特異的発現制御を行うベクター構築に向け、c-Myc遺伝子プロモーター領域に焦点をあて、実験を行った。前年度、クローニングしたc-Mycプロモーター領域が、がん(未分化)細胞において特異的に機能することを確かめるために、ルシフェラーゼアッセイ用ベクターにサブクローニングを行い、構築することができた。2つのルシフェラーゼ用ベクターのうち、c-Mycルシフェラーゼベクターを、c-Mycタンパク質が発現していることが知られているマウス胚性幹細胞EB5に導入し24時間後にルシフェラーゼ活性を測定したところ、高い活性を示した。すなわち、予想した通り、このc-Mycプロモーター領域は、未分化細胞において機能することが示された。しかしながらc-Mycプロモーターにおいても、Oct3/4同様、正常細胞において活性が見られた。そこで、正常細胞においてより低い活性であったOct3/4プロモーター領域を制限酵素を用いて配列を短くしながら、正常細胞において機能する領域を調べ、その配列に変異を入れることで、正常細胞におけるプロモーター活性を低くすることが可能となった。この変異Oct3/4プロモーター制御下に蛍光タンパク質GFP遺伝子を繋ぎ、癌細胞特異的GFP発現ベクターを構築した。EB5細胞と正常細胞にこの発現ベクターを導入した後、蛍光顕微鏡下で観察を行ったところ、正常細胞に比べEB5で顕著な蛍光が認められたことから、癌細胞特異的発現ベクターが構築できたといえる。
|