霊長類のうつ病モデルが報告されているが、主に症状のみに焦点が向けられており、脳内のメカニズムについては検討する余地が残っている。本研究では、行動量の測定だけではなく、陽電子放射断層撮影(PET)イメージングを利用し、脳内のモノアミン系の変化を捉える。Murroughら(2011年)が、うつ病患者にセロトニン1Bレセプター(HTR1B)の異常があることをPET実験によって明確にした。本研究においては、PETイメージングによるin vivo測定が方法の中心となることから、うつ状態における異常を捉えることができるHTR1B特異的なPETトレーサーを追加することとした。また、映像信号のフレーム毎のピクセル濃淡変化をリアルタイム計測する新しい活動量計測システムである中動物用活動量計測システムVigie Primatesの確立も行った。 PETメージングでは、本センターにおいてHTR1Bに特異的名PETトレーサーが有効性を確認するために、そのPETトレーサーを合成し、無麻酔のアカゲザルを対象にPET実験を実施した。その結果、HTR1Bの結合活性はセロトニン放出薬フェンフルラミン投与により低下することが明らかにされ、先行研究と一致した結果を得ることができた。また、予備実験に用いた麻酔薬が[C-11]DASBの結合活性を低下させることから、そのメカニズム解明の実験も合わせて実施中である。活動量計測システムおいては、経時的な変化が安定して検出されるかどうかを確認するために3頭のアカゲザルを用いて、午後に220分間の連続計測を実施した。その結果、10分毎の活動亢進と通常活動の総時間は有意な変化は示されず、安定した結果が収集されることが明確になった。
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