その発現状態が抗癌剤5-FUの耐性と関連していることが示唆されている輸送体候補遺伝子SLC35F5に焦点を絞り、5-FUに耐性を持つ大腸癌由来細胞であるDLD-1細胞を用いて、SLC35F5が5-FU感受性に関与しているかどうかを検討した。 SLC35F5を安定発現しているDLD-1細胞について、5-FUに対する感受性に変動がみられるかを検討したところ、コントロールの細胞と大きな差異は認められなかった。 ここで、SLC35F5の過剰発現細胞では、細胞内染色でSLC35F5タンパク質の明確な発現が確認できていないことから、過剰発現によるアプローチをあきらめ、RNA干渉を用いたSLC35F5遺伝子の発現抑制細胞を用いて検討することとした。 SLC35F5をターゲットとするsiRNAを3種類デザインし、それぞれをDLD-1細胞に導入してコントロールのsiRNAを導入した細胞と比較検討した。この細胞について、5-FUを長期あるいは一時的に曝露した場合における細胞増殖能を測定することにより、その5-FU感受性を検討したところ、いずれのsiRNAについても、コントロールの細胞と比べて有意な感受性の差を認められなかった。一方、5-FUで処理しない細胞においては、SLC35F5発現抑制細胞で細胞増殖能が低下する傾向が認められた。 現在、SLC35F5について、5-FU以外の核酸型抗癌剤の感受性に関与するかどうかを検討している。また、その他のSLC35Fグループの輸送体についても、5-FUを含めた核酸型抗癌剤の感受性に関与するかどうかについて順次検討している。
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