NASH研究において壁の一つとなっていたのは、研究対象とする試料が得難いヒト由来サンプルであったり、ヒトとは種差の存在する動物由来のサンプルであった点であった。研究代表者の確立したin vitro NASHヒト培養細胞モデルにより、この点は1.ヒト由来の細胞より試料を得ることができる。遺伝子や代謝経路の種差を乗り越えることができる。2.培養細胞系のため、安定かつ大量の試料の調整が可能。といった意味で解決することができた。これにより、当該年度で実施したプロテオーム解析を用いた疾患マーカー探索・validationのために試料をどんどん投入する事ができたと同時に、貴重なヒト由来試料を節約する事が出来た。具体例を挙げると、ある分子が疾患マーカーたりうるかvalidationを行う局面では本研究ではwestern blottingなど抗体を用いたvalidationを行っている。抗体の反応条件は抗体ごとに異なり、良いvalidationのためには何種類もの予備検討が必要となるが、これをヒト由来試料ではなく、in vitro系由来試料で行うことが可能であった。これは患者血中の疾患マーカー探索において特に有用であった。当該年度にプロテオーム解析で抽出された各候補分子それぞれについて、このようなvalidationは必須であり、来年度以降の研究実施が円滑に行われる目処がついたものと考えている。やや実施計画が前倒し気味であるが、既にいくつかの候補についてはNASH患者血清、コントロール血清を用いたvalidationが進行しており、その一つは疾患特異性、臓器特異性について有望な結果が得られており臨床的有用性についてさらなるエビデンスを得るべく実験を重ねている。
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