研究課題
NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)研究において壁の一つとなっていたのは、研究対象とする試料が得難いヒト由来サンプルであったり、ヒトとは種差の存在する動物由来のサンプルであった点であった。研究代表者の確立したin vitro NASHヒト培養細胞モデルにより、この点は1.ヒト由来の細胞より試料を得ることができる。遺伝子や代謝経路の種差を乗り越えることができる。2.培養細胞系のため、安定かつ大量の試料の調整が可能。といった意味で解決することができた。これにより、当該年度までに実施したトランスクリプトーム・プロテオーム解析を用いた疾患マーカー探索・validationのために試料をどんどん投入する事ができたと同時に、貴重なヒト由来試料を用いてピンポイント的な実証を行うことが出来た。具体例を挙げると、ある分子が疾患マーカーたりうるかvalidationを行う局面では本研究ではwestern blottingなど抗体を用いたvalidationを行っている。抗体の反応条件は抗体ごとに異なり、良いvalidationのためには何種類もの予備検討が必要となるが、これをヒト由来試料ではなく、in vitro系由来試料で行うことが可能であった。これは患者血中の疾患マーカー探索において、十分な予備検討を行ってから貴重な患者由来試料の検討ができるという面で特に有用であった。NASH患者血清、コントロール血清を用いたこのようなvalidationの結果、高い肝疾患特異性が期待でき、また臨床的有用性についても最大の課題である単純性脂肪肝とNASHとの鑑別に有望なNASH血中マーカ-候補を見出した。これは当該年度までに特許の国内・国際出願を行っている。また、このNASH血液マーカー候補については当該年度の早い段階で論文を作成して投稿を行っている。
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Journal of Gastroenterology
巻: 5 ページ: 577-585
DOI:10.1007/s00535-010-0369-3
Development
巻: Dec 138(23) ページ: 5235-46
doi:10.1242/dev.062802