高血圧性心肥大は日常診療でもよく認められる病態であるが、心肥大は心不全をはじめとする他の心血管疾患の危険因子でもあり、心肥大の予知、予防が重要であると考えられている。近年、高血圧性心肥大で認められる心筋細胞の肥大化、間質線維化に結合組織成長因子(CTGF)が重要な役割を果たしていることなどが報告されており、心筋肥大、線維化ならびに心不全への移行を知るバイオマーカーとして血中CTGFが有用ではないかと考えられた。そのため、本研究では圧負荷モデルにおける血中CTGF濃度の推移と心肥大、心不全の発生、進行との関連を解明することを目的とした。 平成21年度は、1)既報の尿中CTGF定量法を応用し、ラット血中CTGF濃度の定量法を確立すること、2)圧負荷モデルを作成し、経時的に形態上または心機能上の変化を観察し、採取した血中のCTGF濃度を測定し比較することにより、血中CTGFの高血圧性心肥大から心不全発症に至るバイオマーカーとしての有用性を検討することを目指した。 1) 血中CTGFの定量法については、1-1000ng/mLの精製CTGFを用い、既報に基づいたワンステップ競合ELISA法による定量を試みた。その結果、十分な発色が得られず、定量法の改善が必要であることが判明した。現在、抗体等の希釈やブロッキングに用いる緩衝液の組成の改良を試みるとともに、サンドウィッチELISA法への切り替えも視野に入れ、定量法の確立を目指している。 2) 圧負荷モデルについては、ラットの腹部大動脈の結紮径(圧負荷強度)、頸動脈による血圧測定法の調整を行い、圧負荷モデルの作製、評価法の設定を行った。また、予備実験として圧負荷モデルにおいて、経時的に採血と超音波検査による心臓の形態、機能の評価を行った。この採取した血液は1)のCTGF定量法が確立し次第、測定を行い、心臓の形態変化との経時的な比較を行う予定である。
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