高血圧性心肥大は心不全をはじめとする他の心血管疾患の危険因子でもあり、心肥大の予知、予防が重要であると考えられている。本研究では圧負荷モデルにおける心肥大の発生、進行と血中結合組織成長因子(CTGF)濃度の推移との関連について検討することを目的とした。 1)圧負荷モデルラットの検討 圧負荷モデル動物は雄性SDラットの腹部大動脈の結紮により作製し、対象としてSham手術を行った雄性SDラットを用意した。術前(0日目)、術後3日後、1、2、3、4週間後に、心臓超音波検査によりその心機能、心形態の経時的変化を観察したところ、観察期間後半で圧負荷群ではSham手術群に比べ、心室中隔、左室後壁で壁の肥厚が認められた。左室拡張終期径、左室収縮終期径、左室駆出率はいずれの時点でも圧負荷群、Sham手術群で有意な差は認められなかった。 2)血中CTGFの測定 市販されている抗体を用いてELISA法による血中CTGFの定量を試みたが、いずれの抗体でも十分な感度を得ることができなかった。そのため、Sandwich法を利用した市販ラットCTGF測定キットを用い、血中CTGFの測定を試みた。 血中CTGFは術後3日目から2週間目にかけて、一部の圧負荷ラットで高値例が認められたが、その増加は一様ではなく、いずれの時点においても圧負荷群とSham手術群で統計学的には有意な差は認められなかった。 以上より、血中CTGFは圧負荷ラットにおいて心肥大発生前に増加する可能性が示唆された。しかしながら、その増加には個体差が認められ、今後症例数を増やすなどして再検討し、確認していくことが必要であると考えられる。
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