研究概要 |
猫ひっかき病(CSD)の原因菌であるBartonella henselaeの病原因子の配列多型を指標にしたタイピング法の確立を試みた。 初めに、MST遺伝子型や由来が異なる5菌株を用いて、Houston-1株のゲノム情報(BX897699)をもとに、11種類の病原遺伝子の詳細な配列多型解析を行い、タイピングに適した遺伝子とその領域を検討し、IV型分泌装置構成遺伝子virB5、エフェクター蛋白bepAおよび接着因子badAの組合せを得た。 次に、全国から集められたCSD患者由来B.henselae DNA 27例とネコ由来分離株31株の計58例を対象に、virB5、bepA、badAの標的領域をダイレクトシークエンスにて塩基配列を決定し、Houston-1株(BX897699)を基準とした配列多型解析を行った。その結果、virB5では3つの遺伝子型が検出され、1型55.2%(32/58)、2型3.4%(2/58)、3型41.4%(24/58)であった。またbepAでは2つの遺伝子型で1型が96,6%(56/58)および2型3.4%(2/58)で、badAでは5つの遺伝子型で1型1.7%(1/58)、2型81.0%(47/58)、3型12.1%(7/58)、4型3.4%(2/58)および5型1.7%(1/58)であった。これら3つの病原因子の配列多型の組合せによって、58例のB.henselaeは7つのsequence type(ST)に分類された。CSD患者由来27例は5つのSTに、ネコ由来31株は4つのSTにそれぞれ分類され、両者においてST2(46.6%;27/58)とST3(34.5%;20/58)が主要なSTであった。 さらに、CSD患者由来B.henselaeの各病原因子の遺伝子型の分布に注目すると、bepAでは配列多型を認めず、全例がbepA-1型であったが、virB5では2つの遺伝子型が検出され、virB5-3型が51.9%(14/27)、virB5-1型が48.1%(13/27)であった。badAではbada-2型が77.8%(21/27)と最も多かった。 以上より、B.henselaeの病原因子であるvirB5、bepA、badAの配列多型を指標にしたタイピング法を確立し、わが国での本菌病原因子の遺伝子型の分布を明らかにした。
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