研究概要 |
キノンは還元剤の添加によりラジカル種へと還元され、このラジカルが溶存酸素を活性酸素へと変換するという性質を有している。本研究ではこの性質に注目し、イムノアッセイの検出手段として一般的な酵素標識法に代わる新たな検出法として、キノンにより標識する方法について検討を行った。 最初に、様々な構造のキノンについて、還元剤(dithiothreitol)及びluminolを添加後の発光を測定した。その結果、9,10-phenanthrenquinone等のo-キノンは発光開始から発光強度はゆるやかに上昇し、およそ3分程度で最大発光強度に達した。一方で、1,4-naphthoquinone(NQ)等のp-キノンについては、速やかに最大発光強度に達し、その後10分程で最大発光の3分の1程まで発光が減衰するという挙動を示した。次に、NQ由来の発光について、標識酵素として広く用いられているhorseradish peroxidase(HRP)と過酸化水素による化学発光反応系と発光特性を比較した。その結果、NQ由来の発光強度は同濃度のHRP由来の発光と比較して10倍程高く、発光持続時間についてもHRPの発光はおよそ1分で終了するのに対し、NQの発光は1O分以上持続していた。これらの結果より、イムノアッセイの検出手段としてのキノン化学発光法の有用性が示唆された。次に、抗体へのキノンの導入法を検討するために、様々な置換基を有するキノンについて発光強度を測定した。その結果、キノン構造の近傍にスルホン酸基や水酸基を有するキノンでは発光強度が大きく低下することが明らかとなった。そこで、カルボキシル基を有するpyrroloquinoline quinoneやアミノ基を有する2-amino-3-chloro-1,4-naphthoquinoneを用いて、これらを抗体へと導入可能な反応を現在検討中である。
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