EGF受容体(EGFR)はチロシンキナーゼ活性を持つ膜貫通型蛋白(RTK)で、EGF、TGFαやneuregulinなどのリガンドが結合すると、Ras、PI3キナーゼやAktの活性化を起こす。その結果、細胞増殖が促進されるため、EGFRの過剰発現は多くの癌種で予後不良因子となっている。本研究では、EGFRに対する分子標的療法の効果増強を目的とし、その分解調節機構を解析した。大腸癌細胞株LS180とSW480を、血清飢餓後EGF刺激し、Akt経路の活性化とEGFRの発現をウエスタンブロッティングで調べた。その結果、EGF刺激でAkt経路が活性化し、EGFRの発現は低下した。また、PI3キナーゼをLY294002で阻害すると、EGFRの発現が増強した。さらに、EGFRの発現がEGF以外の刺激による調節を受けているか否かを検討するため、SW480をインスリン、VEGFあるいはHGFで刺激したが、EGFRの発現量に変化を認めなかった。また、AktをsiRNAでノックダウンし、EGFRの発現をEGF刺激前後で調べたところ、EGFRの発現量はAktのそれに左右されなかった。以上の結果は、EGFRの発現量が、EGFRの持つ自己リン酸化活性と、その下流のPI3キナーゼ活性の両者により調節されていることを示唆していた。また、EGFRの発現低下はEGF刺激に特異的であり、インスリン、VEGFあるいはHGFなど、他の刺激因子の影響を受けないことが明らになった。
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