腸炎ビブリオの病原性菌株を標的とし、簡便・迅速・好感度かつ一定温度で転写産物であるmRNAの定量的な検出が可能な核酸増幅であるTRC (transcription-reverse transcription concerted)法を用いた検出法の確立とその応用を目的とした。技術的な問題点を解決して実用可能な方法を確立し、特に、魚介類を汚染している腸炎ビブリオ病原性菌株の定量データを明らかにすることは、科学的根拠に基づくリスクアセスメントが必要とされている世界的な状況の中で必要な事である。 平成21年度は、すでに純培養した腸炎ビブリオ病原性菌株を用いて良好な結果を得ているTRC法を腸炎ビブリオ汚染の魚介類検査に応用するために、その基本となる実験室レベルでの実施方法の検討をおこなった。検出感度では、tdh遺伝子転写産物の検出において、本法を用いて10^2-10^3のコピー数が存在すれば、良好な検出結果が得られることが分かった。このコピー数は、菌あたりの転写産物の量が10コピー数程度とすると、病原性菌株が100菌数以下で、検出することが可能であることになる。 日本向けの魚介類の生産場所・輸出場所としても重要とされる東南アジアのタイにおいて、腸炎ビブリオ病原性菌株を標的とした魚介類検査を実践的に実施するための情報収集およびフィールドの選定を実施した。タイ南部では、魚介類、特に貝類の喫食が盛んで、二枚貝類の養殖も盛んに行われていることが、現地の統計資料およびフィールド調査から明らかとなった。特に、汽水域が広がる地域では、その養殖が最も盛んであることから、タイ南部をフィールドの対象地域とした。次年度以降の本法のフィールドでの実施に向けて、準備をすすめている。
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