研究概要 |
昨年までに、高炭水化物食による肥満、高中性脂肪血症、脂肪肝の発症の一因として、肝臓を中心とした脂肪新生(de novo lipogenesis)を遺伝子の発現レベルで解析した。そこで、今年度は、同じ高炭水化物食ではあるが、腸管での吸収が遅く、食後高血糖を緩和するレジスタントスターチ(RS)を多く含む高RS食とのマウスを用いた比較実験により、その予防効果を検討した。高RS食群は高炭水化物食群に対して、体重増加(-19%)、肝臓重量(-21%)、副睾丸脂肪組織重量(-15%)、肝臓中のグリコーゲン量(-34%)中性脂肪含量(-32%)が低く、肥満に対する予防効果が明らかとなった。血液生化学検査では、高RS食群の空腹時血糖、総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸がやや低く、高血糖および高脂血症の予防効果が確認された。遺伝子発現量解析からは、高RS食群の脂質合成酵素の発現量が低く、gsk-3(-16%)、pkf(-13%),fas(-20%),acc(-18%),scd-1(-11%)であった。これらの結果より、高炭水化物食摂取による肝臓での脂質新生(de novo lipogenesis)を妨げる効果が明らかとなった。レジスタントスターチによって、腸管での炭水化物の吸収が遅延し、食後血糖上昇が緩やかなって、肝臓での脂質新生が抑制されていると考えられた。以上のことから、炭水化物を多く摂取する日本人にとって、肝臓を中心とした脂肪新生(de novo lipogenesis)を抑えることが、肥満、高中性脂肪血症、脂肪肝の予防になり得ることが考察された。
|