近年、microRNA(20~25塩基程度の1本鎖RNA)という全く新しい概念に属する分子群が、種々の病態において極めて重要な役割を持つことが明らかにされてきた。最近では発癌制御に関与し、重要な機能を果たすことがわかってきているにも関わらず、癌予防においてmicroRNAを標的とした研究は全くなされていない。そこで癌予防食品成分がmicroRNAの発現調節に寄与しうるか否かについて検討をした。多くのがん細胞ではp53が失活しており、RBの不活性化を経て、細胞増殖関連遺伝子の発現が高まり無秩序な細胞増殖をおこす。そこでRB経路の活性化を促す働きをもつmicroRNAであるmiR-34aに注目し、miR-34aを発現誘導させることで癌予防効果を発揮する食品成分の探索を行った。 現在までの結果:既知の癌予防食品成分からmiR-34a発現を調節している物質を見つけるため、様々な食品成分を使用し、RB失活癌細胞に対してG1期における細胞周期停止を促す物質の探索を行った結果、いくつかの食品成分を見いだした。さらに、これらの候補物質の中から、リアルタイムPCRを用いて実際にmiR-34a発現量を測定することで、miR-34a発現上昇を誘導する物質を見いだした。また、miR-34aターゲットタンパク質の減少をウエスタンブロットで確認し、miR-34a発現上昇との関係を検証した。これらの結果から、食品成分による生体内microRNAの調節は可能であると考えらる。さらに、この成分による癌細胞増殖抑制効果におけるmiR-34aの関与の程度を調べることで、「microRNA調節化学予防法」の実現が充分期待出来る。
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