研究概要 |
本研究は脂肪細胞の肥大化および過形成に血管新生が関係しているという仮説を基に、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を測定し、肥満との関連を疫学的に調査することを目的としている。 対象者は福岡県下のA健康保健組合の男性労働者である。前年度は2000年度健康診断を受診した485名の血清VEGFを測定した。今年度は2006年度に健康診断を受診した450名について新たに血清VEGF濃度の測定を行った。前年度と合わせて935名のデータを集計し、ロジスティック回帰分析を用い、VEGFと肥満との関連について検討を行った。 対象者を低体重群(BMI≦18.5)、普通体重群(18.5<BMI<25)、肥満群(BMI<25)に分け、VEGF濃度の平均値を比較すると、肥満(BMI≧25)群が最も高くなっていた。また、VEGF濃度を四分位に分け、ロジスティック回帰分析よりオッズ比を算出した。VEGF濃度がもっとも低い群に比べ、最も高い群では、肥満のリスクが約1.5倍高いことが認められたが、わずかながら統計学的に有意とはならなかった(OR 1.74,95%CI 0.96-2.16)。しかしながら、量反応関係は認められた(p for trend<0.01)。 本研究は横断研究であるため、因果関係については言及できないが、肥満群ではVEGF濃度が高く、量反応関係が認められ、肥満とVEGF濃度に関連がある可能性が示唆された。今後は前向き研究として検討する予定である。
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