最終年度はこれまでの得られたデータを集計し、横断的にVEGFと肥満との関連を検討し、次にVEGF濃度が将来の体重増加に影響を与えるかどうか前向き研究を実施した。 まずVEGF濃度を四分位に分け、VEGF濃度の四分位別にベースライン時の対象者の基本属性および生化学データを比較したが、特に有意な差は認められなかった。しかしながら、肥満者(BMI25以上)の者の割合は、VEGF濃度が最も高い集団で37.1%と最も高く、有意な差が認められた(P<0.05)。次に肥満とVEGF濃度との関連についてロジスティック回帰分析を用いてオッズ比を算出した。VEGF濃度が最も高い群では、最も低い群に比べて、1.3倍ほど高くなっていた。統計学的有意な差は認められなかったが、量反応関係は統計学的に有意であった。 次にベースライン時のVEGF濃度が将来の体重増減に影響を与えるかどうか検討した。ベースラインのデータを基に約4年間の前向き研究とした。ベースライン同様、4年後の基本属性および生化学データに違いは認められなかった。さらにベースライン時のVEGF濃度別の4年後の体重の増減について、共分散分析を用い、年齢および運動習慣、ベースライン時のBMIで補正した体重増減の平均値を比較検討した。VEGF濃度が最も低い群の4年後の体重増減の平均値が0.1kgであったのに対し、それ以上の濃度の群の体重増減の平均値は、0.5kgから0.65kgであった。しかしながら、統計学的な有意差は認められなかった。 近年、VEGF濃度の増加は心疾患のリスクとなる可能性も指摘されており、本研究の結果により、VEGF濃度の測定が将来の体重増加さらには生活習慣病などの指標のひとつとなる可能性が示唆された。
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