研究概要 |
ダイオキシンの毒性は転写因子Aryl hydrocarbon receptor(AhR)が仲介し、ダイオキシンの毒性とCYP1A1をはじめとするAhR依存的な遺伝子発現はよく対応することが知られている。ダイオキシンの毒性発現には臓器特異性が存在するが、そのメカニズムはいまだ不明な点が多い。本研究では、ダイオキシン類の中で最も強い毒性をもつ2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)を曝露したマウスの各臓器において、CYP1A1遺伝子発現調節メカニズムを解明することを目的としている。今年度は、ChIP on chipによりAhRが結合する領域を網羅的に検出し、それらの領域とAhRが結合すると報告があるXRE配列の有無について解析をおこなった。 TCDD(2μg/kg)曝露0時間と12時間の肝臓を用いてAhR抗体によるChIP assayをおこなった。免疫沈降画分DNAをAffymetrixのプロトコルに従ってMouse Promoter 1.0R Arrayにハイブリダイズし、スキャン後Tiling Analysis Softwareでデータを解析した。TCDD曝露0時間に対して曝露12時間で、有意にAhRの結合量が増加した領域から、遺伝子の転写開始点-2000~+1000内にAhR結合ピークが存在する21領域を選別し、XREの有無についてまとめたエクセルファイルを作成した。得られた領域においてPCRをおこない、ChIP on chip実験系の妥当性を確認した。AhR依存的でXRE非依存的な遺伝子発現調節メカニズムは数種類の遺伝子を除いて不明な点が多いため、本研究の結果から、臓器特異的なTCDD毒性に関係する新しい遺伝子発現調節メカニズムが明らかになる可能性が考えられた。
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