研究概要 |
骨粗鬆症症は、近年寿命が延び高齢者人口が増えてきたため、特に問題になってきている。日本では、約1,000万人の患者がいるといわれており、高齢者人口の増加に伴ってその数は増えている。骨粗鬆症の予防として適度な運動やカルシウムやビタミンDなどの摂取が重要であることは知られているが、近年多価不飽和脂肪酸にもなんらかの関連があることが報告されるようになってきた。そこで今回、血中脂肪酸分析を行い、脂肪酸と骨粗鬆症に伴う骨折との関連を症例・対照研究により調査することとなった。 患者は、大腿頸部骨折・脊椎圧迫骨折・橈骨遠位端骨折・上腕骨骨折のいずれかで入院もしくは通院した者である。なお、これらの骨折は骨粗鬆症に特に多く発症することが知られている。症例数52名の内訳は、男性10名(平均年齢は83歳)、女性41名(平均年齢は81歳)であった。また、対象者は骨折とは関係なく通院した者もしくは健常者であり、その内訳は男性10名(平均年齢は82歳)、女性12名(平均年齢は80歳)であった。血中リン脂質中脂肪酸組成は、Bligh&Dyer法により総脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーよりリン脂質分画を分離、メチル化後、キャピラリーカラムDB-225(0.25mm,30ml ength id,0.25μm;J&M Scientific, Folsom, CA)を用いて、ガスクロマトグラGC-2014(島津製作所,京都)にて測定した。 今回、我々が最も注目していたω3系多価不飽和脂肪酸については、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸では、特に有意差は認められなかった。また、ω6系多価不飽和脂肪酸の代表であるリノール酸やアラキドン酸でも、特に有意差は認められなかった。一方で、ω9系一価不飽和脂肪酸の代表的脂肪酸であるオレイン酸は、対照群で有意に高かった(対照13.7±0.8vs患者13.2±0.7,p=0.01)。以前より、オレイン酸には骨の石灰化および形成には好影響があることが報告されており、骨粗鬆症に伴う骨折の予防に関与していた可能性が示唆された。
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