研究概要 |
研究目的は、慢性腎臓病の指標としてのADMA (asymmetrical dimethylarginine)が動脈硬化を及ぼす可能性について、約7年間に及ぶ追跡研究から、冠動脈石灰化進展を評価することによって明らかにすることである。当研究は本体研究の一部であるが、対象者は初回調査時(平成13年度から16年度)に滋賀県草津市在住の一般40代男性から無作為抽出した319名である。平成21年度にその全対象者に協力を呼びかけ、255名が参加した。問診、身体測定および冠動脈石灰化を評価するためのマルチスライスCTを含む検査を行った。またそれと並行して、初回調査時に採取し、-70℃に保存した、319名分の血漿から的ADMA濃度を測定した(平均0.39μmol/L,1標準偏差0.06μmol/L)。 平成22年度は、冠動脈石灰化の指数測定および評価を行ったが、標準化を図るため、初回時と同様にCT画像情報を米国の特定の検査機関に依頼した。また総合所見も含め検査結果を参加者本人に郵送により報告した。 初回調査時の血中ADMA値と冠動脈石灰化指数の進展との関連について、年齢、肥満度や古典的な動脈硬化危険因子などを調整し多変量解析を行った結果、血中ADMA高値と冠動脈石灰化発生との独立した関連を明らかにした(ADMA 0.1μmol/L上昇当たりの相対危険度2.31(95%信頼区間:1.02-5.22))。また血中ADMA値を三分位で分け低値群を基準とすると、高値群の相対危険度は2.91(95%信頼区間:0.87-9.68))であった。また血中ADMA値と推定糸球体濾過量とに関連を認めなかった。以上よりADMAは腎機能と関係がなく、動脈硬化の新規危険因子である可能性を示唆した。
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