研究概要 |
平成22年度は、既に調査が完了していた岡山市におけるソーシャル・キャピタル(SC)と健康の調査結果について、論文として発表した(Iwase T, 2010, Ueshima K, 2010)。特にIwase Tらの研究は、これまで理論的に紹介されていたいわゆる結束型と橋渡し型SCの健康影響の実証研究として意義が高い。また、引き続き、岡山県において実施された、高梁市・吉備中央町・鏡野町の65歳以上の全高齢者(約22,000人)を対象とした調査について、調査デザイン等について助言を行い、データセットが確定し、基礎集計を行った。また上記調査に関連して、対象とする行政施策について、当初予定していたメタボ対策から、地域自殺対策緊急強化基金により行われる自殺対策事業を想定して、研究デザインの修正を行った。 昨年度から継続して行っている学際的研究の一環として、日本大学稲葉らが編集した「ソーシャル・キャピタルのフロンティア」において、健康をアウトカムとしたレビューをまとめた。 行政内データミクロレベルリンケージについては、継続して調整を行っているが、先駆例として、吉備中央町において上記調査後の小地域介入に関して調整を行っている。本介入デザインおよび評価指標について、Harvard School of Public Healthの、Kawachi教授と直接相談するとともに、New Zealandにおける研究についてOtago大学のBlakely教授とも意見交換を行った。 平成22年6月には、第2回International Symposium on Social Capital and Healthを岡山にて開催し、トピックとして職場のSC研究に関して、Finnish Public Sector Cohortの概要をVartera教授から、最新の知見についてOksanen先生から報告があった。また、岡山県・岡山市の行政担当者を対象に、行政施策におけるSC研究活用の意義(国立精神神経センター、田中先生)、に加え、事例として、米国におけるExperience Corpsのわが国での展開状況「りぷりんと」(都老研、藤原先生)、AGESプロジェクトにおけるサロンのRCT評価(日本福祉大、平井先生)の報告があった。本シンポジウムの第3回は、平成23年にManchesterで開催される予定である。
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