研究概要 |
[研究目的]:大腸がんの症例対照研究において、大腸がんといくつかのDNA修復酵素遺伝子多型との関連を検討する。さらに、これらの遺伝子多型と関連環境要因との交互作用を解析することによりDNA修復機構の大腸発がんへの影響を明らかにする。 [研究対象]:2001年10月から2003年12月の期間に福岡市と近郊3地域の住民で、手術目的で福岡市の8つの病院に入院した年齢20-74歳の大腸がん患者が症例群である。対照群は、大腸がんあるいは大腸切除術の既往のない20-74歳の福岡市と近郊3地域の一般住民である。また、家族性大腸腺腫症と炎症性腸疾患の既往を有する者は症例と対照から除外した。生活習慣要因の調査を終えた840例の大腸がん症例と833例の対照のうち、遺伝子解析の同意が得られた症例685名と対照778名が今回の研究対象である。PCR-RFLP法により遺伝子多型を決定した。 [結果]:DNA修復酵素XRCC1 Arg194Trp遺伝子多型と大腸がんリスクとの関連は見られなかった。XRCC1*194Arg/Arg遺伝子型を持つ者と比較して、194Arg/Trp, 194Trp/Trp遺伝子多型を持つ者のオッズ比はそれぞれ1.05(0.84-1.31), 0.93(0.65-1.34)であった。一方、DNA修復酵素XRCC1 Arg399Gln遺伝子多型と大腸がんリスクとの検討では、 XRCC1*399Arg/Arg遺伝子型を持つ者と比較して、399Arg/Glnおよび399Gln/Gln遺伝子多型を持つ者のオッズ比はそれぞれ1.12(0.90-1.40), 1.55(1.01-2.40)でした。 [結論]:DNA修復酵素遺伝子多型XRCC1 Arg194Trpと大腸がんリスクとの関連が見られなかったが、DNA修復酵素XRCC1*399Gln/Gln遺伝子多型と大腸がんリスク上昇との関連が認められた。現在、これらの遺伝子多型と環境要因(たばこ、アルコール及び赤身肉)との交互作用を検討している段階である。
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