研究概要 |
心拍数の増加は心・血管病の予知因子であるという報告がある。関係の背景に、高心拍数が肥満、交感神経活性、高血圧などに有意に関連しているという点が示唆されている。この代謝異常の重積は内臓肥満を中心とした肥満症、高血圧、脂質代謝および糖代謝異常の集合体であり、近年、メタボリック症候群として注目を集めている。その基となるメカニズムは明らかにされていないが、交感神経活性がメタボリック症候群の鍵を握っている可能性がある。少数の横断研究では、高心拍数とメタボリック症候群の関係は報告されているが、縦断研究では、未だに明らかではない。そこで我々は一般住民を対象とした疫学的縦断研究を行うことにより、交感神経活性がメタボリック症候群への進展に関連しているという仮説を立て、それを実証することを本研究の目的とした。 本研究に、大規模な疫学調査は必須であり、平成11年に大規模検診を行った福岡県田主丸町において、4月より約半年かけ、入念な準備のもと40歳以上の男女約2000人を対象としての大規模住民検診を実施した。受診者は計1943人で、すべての受診者に問診、各身体変量の計測、採血による脂質値、血糖値を含めた一般生化学検査、心エコー、頚動脈エコー検査、Food frequency法による栄養調査などを行った。また我々は平成14年より毎年7月に、長崎県宇久島にて住民検診を行っており、延べ1,400人の住民検診受診者のデータの集積がある。平成21年も7月に実施し、計207人の受診が得られている。この大規模検診によって得られた検査値の入力、住民へのデータの還元、データの解析、分析結果の学会発表を平成22年度に行う予定である。
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