HSP27は動脈硬化性疾患との関連が強いことが示唆されている。メタボリック症候群とは、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症はそれぞれ単独でも動脈硬化のリスクを高める要因であるが、これらが重積することによって動脈硬化性疾患の発生頻度が高まることが知られている。このようなリスクの集積は、偶然に起きるのではなく、内臓脂肪の蓄積による肥満が共通の基盤として着目され、メタボリック症候群の概念が生まれた。特に日本人は、米国人よりこのメタボリック症候群に悪影響を受けやすいとされる。また、心血管イベントを抑制するうえでのコレステロール吸収阻害の重要性が注目されるようになった。欧米では冠動脈疾患の既往、肥満、または2型糖尿病を有する患者において小腸からのコレステロール吸収が亢進しているという報告もあるが、これらの関連性については十分に明らかにされていない。 2010年は、今までの長崎県宇久町(漁村)での調査に加えて、福岡県田主丸町(農村)での約2000人規模の住民検診受診者の中からメタボリック症候群該当者を抽出し、動脈硬化と脂質異常症の検討を行った。対象者には検診データをもとに、体重、ウエスト径などの身体変量、安静時血圧測定、採血、頸動脈エコー検査による経過観察を行い、あわせて住民へのメタボリック症候群に対する啓蒙活動、検査値の入力、及び住民へのデータ還元を行った。 今後、データ解析を行い、分析結果を国内外での学会で発表し論文作成を行っていく予定である。HSP27は冠動脈疾患に対するバイオマーカーとしてだけではなく、メタボリック症候群を含めた動脈硬化性疾患との幅広い関連を検討したいと考える。(674文字)
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