研究課題
本研究は、日本において養育者に乳児の泣きに関する正しい知識と適切な対応に関する教育をパープルクライングというDVD教材を用いて介入することにより、乳児の泣き行動に関する知識が向上し、養育者の不安感を減らし、また突発的に乳児を激しく揺さぶったり叩いてしまったりという虐待的行為を抑制することが可能かどうかを、エビデンスレベルの高いランダム化比較試験により検証した(N=201)。具体的には、介入群と対照群において、プライマリーアウトカムである(1)乳児の泣き行動に関する知識(2)揺さぶり行動に関する知識、(3)乳児の泣き行動への対応行動、(4)乳児がなだめても泣きやまないときの積極的行動、(6)乳児がなだめても泣きやまないときの消極的行動、(7)乳児の泣き行動に関する知識の家族との共有行為について比較した。また、教育プログラムが推奨する乳児がなだめても泣きやまないときにその場を離れた回数についても比較した。その結果、介入群は、泣きの知識が有意に高く、何をやっても泣き止まない時の受動的行動においても自分を責めない、好ましいとらえ方をしている傾向にあることがわかった。また、何をやっても泣き止まない時にその場を離れる行動は、介入群は対照群に比べて4.8倍多くとっており、統計的にも有意であった。一方、泣きへのフラストレーションは両群で差はなかった。結論として、虐待による頭部外傷である乳幼児揺さぶられ症候群を予防するために開発された教材は知識の向上、行動変容において望ましい方向に変化させることがわかった。この研究から、少なくとも北米で開発された本教材は日本でも受け入れられるものであることが示された。今後は、この教材を妊婦健診、両親教室、産後の授乳教室、1ヶ月健診、新生児訪問、こんにちは赤ちゃん事業などで広く活用し、実際の虐待による頭部外傷を減少させるような政策が期待される。
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