研究概要 |
本研究は、地域での健診時や介護予防事業、外来診療などの個別面接において認知機能が軽度低下した高齢者をスクリーニングするための簡便な認知機能検査を開発および評価することを目的として実施した。平成21年度はMontreal Cognitive Assesment (MoCA) (Nasreddine, et, al, 2005)に記憶検査などを追加した修正日本語版MoCA (MoCA-J)の妥当性および信頼性の検討を実施した。また、集団式の高齢者用認知機能検査ファイブ・コグの信頼性および妥当性の検討のためのデータの収集を地域在住高齢者を対象に行なった。平成22年度はさらにデータ収集を行いデータの分析を実施する予定である。 MoCA-Jの有効性を検討するため、東京都健康長寿医療センター物忘れ外来受診のMCI高齢者30名、軽度アルツハイマー病(AD)患者30名、地域在住の健常高齢者36名の協力を得て研究を実施した。 結果、MoCA-Jは軽度認知機能障害:Mild Cognitive impairment (MCI) (Petersen, et, al, 1999, 2001)の鑑別において高い感度と特異度を示した(Fujiwara, et, al, 2010)(鈴木,2010)。健常高齢者からMCIを鑑別する際の最も有効なカットオフ値は25/26点、感度は93%、特異度は89%であった。軽度AD群の鑑別では、感度100%、特異度89%であった。 認知症患者の急速な増加にともなって、簡便な認知機能で比較的短時間でMCIをスクリーニングする検査の開発が求められている。また、MoCAは多数の言語に翻訳されており、MCIに関する研究知見の国際比較などの観点から考えても、本研究で得られたMoCA-Jに関する研究結果は意義を持つものであると考えられた。
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