本研究は、地域での健診時や介護予防事業、外来診療などにおいて、認知機能が軽度低下した高齢者をスクリーニングするための、簡便な認知機能検査を開発および評価することを目的として実施した。平成22年度は集団式の高齢者用認知機能検査ファイブ・コグの信頼性および妥当性の検討のためデータの収集を地域在住の健常高齢者(CDR=0)341名、軽度認知機能低下の疑いのある高齢者(CDR=0.5)77名、軽度認知症(CDR=1)8名の協力を得て行った。 ファイブ・コグ検査の信頼性については、再検査法にて各尺度に高い信頼性が確認された。ファイブ・コグの各検査と認知機能検査との併存的妥当性、因子的妥当性についても確認された。 健常高齢者(CDR=0)と軽度認知機能低下の疑いのある高齢者(CDR=0.5)の鑑別のため、ROC曲線を算出した。ファイブ・コグの記憶課題の素点とMMSEの合計点のArea under the curve(AUC)は中程度の予測能を示し、感度と特異度はほぼ同様であった。さらに、ファイブ・コグの記憶課題と注意課題の素点をロジスティック回帰分析から導き出した合成得点としROC曲線を算出した。結果、CDR=0とCDR=0.5のAUCは中程度の予測能を示した。また、この合成得点の感度、特異度はMMSEをやや上回る結果となった。 ファイブ・コグ検査は、多数の高齢者を同時に検査することが求められる介護予防事業などでの活用が期待できる。本研究の結果は、ファイブ・コグ検査が個別の認知症スクリーニング検査であるMMSEを上回る予測能を持つことが示された。集団で検査が可能であるファイブ・コグの実施の簡便さやコストの有利さから考えて今回の結果は意義が大きいだろう。
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