近年の基礎的栄養研究では、抗酸化を有するビタミンCが筋肉の増強、骨折や骨粗鬆症、身体機能や運動機能の低下に予防的に作用することが示唆されている。本研究は、地域在宅高齢女性を対象として、血中ビタミンC濃度と身体機能、運動機能の関連を縦断的に調べ、それを疫学的に確認するための世界で初めての追跡研究である。主にビタミンCは野菜や果物から摂取され体内に蓄積、利用されるので、血中ビタミンC濃度の測定は、体内での生理的作用を直接的に評価できる利点がある。また欧米型食生活に比べ、日本型食生活は、抗酸化ビタミンの摂取が多いと言われ、中でもビタミンCを豊富に含む野菜・果物の摂取は多い。わが国は世界に先駆け超高齢者社会を迎えた上に、このような日本型食生活が抗加齢に寄与している可能性を秘めている。抗酸化ビタミンに関する新しい知見は、高齢者における健康維持のための対策の発展に多大に貢献できる物と考える。そこで今年度は、東京都板橋区在住で2006年10月~11月に「お達者健診」を受診した地域在宅高齢女性957名(70-84歳)をベースライン調査とし、2009年10月に追跡調査を行った。対象者は健診会場で、身体計測、生化学検査(血漿ビタミンC濃度等)、身体機能測定、食生活習慣調査等を実施した。2009年の健診実施者は569名であった。健診参加率は約6割であった。現在、データクリーニング及び、非受診者には郵送によるアンケート調査を促しているところである。今後は出来る限り、非受診者の生存、死亡、転出確認を行う。2009年の追跡調査を用いて、高齢期における血中ビタミンC濃度と身体機能、運動機能等の経年的変化との関連を明らかにする。
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