研究課題
近年の基礎的栄養研究では、抗酸化ビタミンを有するビタミンCが、筋肉の増強、骨折、骨粗鬆症、運動機能低下に予防的に作用することが示唆されている。本研究では、2006年に行われたお達者健診をベースライン(板橋区在住の70-84歳の高齢女性)とし、2009年に追跡研究を行い、血中ビタミンC濃度と運動機能との経年的変化との関連を明らかにすることを目的とした。ベースライン時の健診受診者は957名であった。このうち2009年の健診を受診した者は610名でベースライン時に血漿ビタミンC濃度が測定されている者を解析対象とした。対象者のベースライン時の年齢は71.9±3.8歳(平均±標準偏差)、血漿ビタミンC濃度(Vit.C)は9.53,1.51μg/mL(幾何平均,幾何標準偏差)、ビタミンCサプリメント(VC/Sup)摂取者25.1%であった。ベースライン時のVit.C濃度と身体機能の関連を見ると、VC/Sup摂取者を除外するとVit.C濃度が上昇すると握力は強く、開眼片足は長くなっていた。ベースライン時と3年後の運動機能を比較すると、握力はベースライン時に比べて追跡時の方が有意に強く(P<0.001)、開眼片足(P<0.001)、最大歩行速度(P=0.01)は追跡時の方がベースライン時より有意に低下していた。VC/Sup摂取者を除外すると、握力と開眼片足で同様の結果となった。ベースライン時のVit.c濃度と、追跡期間中の運動機能の変化との間に正の相関(r=0.1、P=0.02)が認められた。しかしVC/Sup摂取者を除外するとその関係は認められなかった。ベースライン時のVit.C濃度と3年間の運動機能の変化量との関連をみると、握力が有意に低下していた。VC/Sup摂取者を除外するとこれらの関連は認められなかった。
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