研究概要 |
中高年のうつ病および自殺者の急増は、解決すべき重要な課題である。近年、経口摂取するアミノ酸や代謝物がヒトの情動に影響するとの報告があるが、国内の研究報告はほとんどない。アミノ酸摂取と抑うつとの関連を解明する上で、アミノ酸摂取量の把握は必須であるが、日本の食品アミノ酸組成表は昭和61年より改訂されておらず、また食品成分表掲載食品の約半数のアミノ酸組成が欠損している。そこで、本年度は(1)食品アミノ酸組成表を構築し、(2)地域在住中高年者のアミノ酸摂取量の性差、年代差について検討した。 (1) NILS食品アミノ酸組成表(仮称)は、2007年文科省報告書より402食品、米国農務省公表データより137食品のデータを収集し、これを基に同種同属の類似種で置換し18種のアミノ酸含有量を算出した。五訂増補食品成分表掲載食品1,878のうち1,685食品についてアミノ酸含有量を推定し、対象コホートでのタンパク摂取量の92.8%をアミノ酸摂取量で算出することができた。今回置換できなかった193食品は、タンパク質含有量が1g未満か、使用頻度または1回の使用量の少ないものだった。 (2) 「国立長寿医療センター研究所・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第5次調査での3日間食事秤量記録調査から在民2,221人(40~88歳)の各アミノ酸の1日平均摂取量を算出した。その結果、男性は女性よりアミノ酸摂取量が多かった。エネルギー調整したアミノ酸摂取量は男女とも年代があがると増加したが、80代の女性では低下した。また、女性のプロリンのみ年齢とともに摂取量が有意に減少した(p<0.01)。この地域の中高年者では年齢が高くなってもアミノ酸摂取量に大きな変化はなく、摂取バランスを維持していることが示唆された。しかし、アミノ酸の摂取基準値はなく、摂取量の過不足については不明である。今後、その基準値策定を含めた解析が必要である。
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