本研究では、亜硫酸処理がなされた食品中のDNA塩基配列情報を正確に解析する方法を確立し、これら食品に対するDNAの塩基配列情報に基づく検査を可能とすることを目的とした。平成22年度は以下の3項目の検討を行った。1. パパイヤ果実、パパイヤ抽出DNAに対し、様々な条件で亜硫酸処理を行ったが、当所の実験環境下ではDNAのシトシンからウラシルへの塩基配列の置換は見られなかった。2. リアルタイムPCR装置を用いたSYBR green蛍光試薬による定性PCRの検出系(SYBR green検出系)を検討した。亜硫酸処理がなされたドライフルーツから抽出したDNAにおいては、通常のPCRの系よりもSYBR green検出系の検出率が高かった。また、SYBR green検出系で得られた増幅産物をダイレクトシークエンスすることにより、従来法よりも迅速、簡便にシークエンスデータを得ることが可能であった。3. 市販亜硫酸処理食品としてドライフルーツを対象に検討をおこなった。PCRで増幅産物が得られなかった試料に対し、シトシンがウラシルに置換したと仮定して設計したPrimer対、あるいは亜硫酸処理を行った抽出DNA溶液を用いたPCRを行ったが、増幅産物は得られなかった。PCRで増幅産物が得られた試料についてはダイレクトシークエンスを行った。シークエンス結果を解析したところ、一部試料で塩基の置換が疑われる事例が観察された。また、一部試料についてはPCRで十分な量の増幅産物が得られているものの、シークエンスデータが得られない事例が見られた。今後、さらに多くの市販亜硫酸処理食品のシークエンスを行い、亜硫酸処理が食品中DNAの塩基配列に与える影響を解析する必要があると考えられた。
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