過敏性腸症候群のような機能性消化管障害では、様々な刺激に対して消化管は過剰反応を示し、ストレスが加わると症状は増悪する。IBSの病態生理として研究されている消化管の運動異常および脳腸相関に着目し、ラットのストレスモデルを考案した。ストレス潰瘍の代表的なストレス負荷法である水浸拘束負荷は、ラットに十分なストレスを与えうる方法の一つであるが、水浸拘束負荷により大腸運動がどのように変化するかについては、検討が不十分である。圧トランスジューサーにより、腸管運動をリアルタイムに評価することで、水浸拘束負荷によるストレスが腸管運動にどのような影響を及ぼすか、評価を行った。SD系ラットを用い、24時間絶食後、エーテルにて吸入麻酔を行い、圧トランスデューサーを経肛門的に挿入し、先端の圧受容体の位置が肛門から3cmに固定した。ラットをネットでラッピングし拘束した状態で、室温にて1時間、大腸内圧を測定した。引き続き、拘束した状態のまま水温20℃の水に剣状突起まで浸し、さらに1時間大腸内圧を測定した。大腸内圧曲線を記録し、得られた大腸内圧曲線から、15分間ごとにArea under curve(AUC)を求めて、運動係数(Motility Index : MI)を算出した。拘束負荷のみの場合と比較して、水温20℃では有意にMIの増加があり、ストレスにより大腸運動は亢進した。したがって、水浸拘束負荷はラットに十分なストレスを与えうる負荷であり、ストレスによる腸管運動の亢進をリアルタイムに評価できる有効な実験系であることが確認できた。さらにストレス条件下において、三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、マイナートランキライザー、ラモセトロン投与を行うことで、ストレスと腸管運動、薬剤の影響の評価を行うことが可能であることが確認できた。
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