認知症患者は年々増加しており、その介護負担は、非常に大きなものである。介護が原因で病気になる家族も増えており、なんらかの心身の症状がでる病態を「介護ストレス症候群」と名づけた。介護ストレス症候群の診断・治療について検討すべく本研究を計画した。 これまでは、Zarit介護負担尺度による気分的な評価しかなかった。しかし、血液検査、唾液検査から「介護ストレス症候群」の程度をバイオマーカー(血液中コルチゾール、唾液中コルチゾール・アミラーゼなど)で診断することで、適切な処置が講じられ、高齢者の虐待、心中、自殺が減るのではないかと期待できる。 21年度は、唾液バイオマーカーのコルチゾール・アミラーゼの安定した測定方法を確立した。高齢者は、唾液分泌量が少なく、予定していた方法では、唾液が十分採取できなかったため、唾液採取方法を再検討し、研究が軌道に乗るまで時間がかかった。研究に同意された患者(21年度20組)の認知症の程度・生活機能の評価・睡眠評価・唾液採取を行い、介護者の身体症状聴取・うつ、不安、QOLなどの心理検査・血液検査・唾液採取を行っている。臨床心理士によるカウンセリングも同時に行い、前後でのストレスマーカーの変化も検討している。認知症患者、介護者の睡眠時間は、actiwatchで実測しているが、介護者の方が患者に比べ、睡眠時間が短い傾向はみられる。また、介護者に高血圧患者が多く、24時間自由行動下血圧計による血圧変動の評価も研究に組み入れることにした。
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