研究概要 |
認知症の介護疲れによる心身のストレスから、介護者のうつや虐待の増加が社会で問題になっている。介護者のストレス状態の把握を目的として心理検査とストレスマーカーである唾液アミラーゼの測定を行った。 認知症専門外来に通院中の介護者に心理検査(QOL26、STAI、POMS、GDS15、Zarit介護負担尺度)、ストレスのバイオマーカーとして唾液アミラーゼの簡易測定(自宅)を施行した。50組の参加者の中で、老々介護34組を解析した。 介護者の属性は、妻18名(平均年齢73±8歳)、夫16名(77±4歳)。患者の要介護度は、要介護122名、要介護2以上12名。要介護度、介護時間に差はないが、介護者の平均GDS15は妻6.4±3.8点、夫4.3±3.0点、POMSの抑鬱(p=0.05)、STAIの特性不安(p=0.02)も妻の方が有意に悪い結果であった。介護者の症状は、妻はイライラ50%、疲労79%と訴えが多く、夫は15%、23%と少なかった。しかしながら、夫の自宅での唾液アミラーゼは平均322±116kU/lと男性認知症患者の平均134±56kU/lに比べ有意に高値だった。女性患者のMMSEとその夫のZarit介護負担尺度(r=0.67,p<0.01)およびGDS(r=0.78,p<0.01)は負の相関を示した。要介護1と2以上を比較すると、夫は、心理的QOLが低く、特性不安とGDSが高くなった。妻は、夫の認知症進行に伴う有意な症状の増悪はみられなかった。 老々介護ストレスの実態を調査し、介護者は高頻度でうつ、不安を有しており、介護者のケアも認知症診療で取り入れる必要がある。男性介護者のストレス把握には、愁訴だけでなく、バイオマーカーの評価も重要と考えられた。
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