過剰エネルギー摂取に起因するインスリン抵抗性に対する和漢薬(八味地黄丸、防己黄耆湯)の効果を検討するため、2種類のモデル動物(高脂肪食負荷ラット、フルクトース負荷ラット)を用いた。 高脂肪食負荷群では、普通食群に比べ体重、精巣上体脂肪組織重量の増加、血糖値上昇、糖耐性の発現が認められた。インスリン値、血中脂質は有意な変化を認めなかった。これに対し、八味地黄丸投与群では血糖値上昇、糖耐性の発現、精巣上体脂肪組織重量の増加の有意な抑制、血中遊離脂肪酸の減少が認められた。防己黄耆湯投与群ではこのような血中パラメーターに対し、有意な変化を示さなかった。また、血中のアディポサイトカインについては、防己黄耆湯投与群でレプチン値の有意な上昇が認められたが、アディポネクチン、TNF-α、PAI-1は、いずれの投与群においても変化しなかった。 フルクトース負荷群では、糖耐性の発現が認められたが、体重、精巣上体脂肪組織重量、血糖値、インスリン値には有意な変化は認められなかった。血中脂質では、HDLコレステロールが増加していたが、総コレステロール、LDLコレステロール値は有意な変化を示さなかった。これに対し、八味地黄丸、防己黄耆湯いずれの投与群においてもインスリン値とLDLコレステロール値の上昇が認められた。また、アディポネクチン、レプチン、TNF-α、PAI-1についてはいずれの投与群においても変化は認められなかった。以上の成績より、八味地黄丸に高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性の発現に対し、好影響を与える可能性が示唆された。
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