平成21年度は、NSAIDs起因性小腸潰瘍に対する大建中湯の予防効果の検討研究の1年目にあたり、現在、研究中である。 本年度の活動内容は、平成21年9月に院内倫理委員会の承認された後、ボランティアを10人募集した。ボランティア健常人に対しては、全員有害事象が起きた際に保証できるよう、保険に加入した。また、同時平行して、大建中湯のプラセボを作成した。 平成21年11月より、ボランティア健常人に対して、内服薬投与前のカプセル内視鏡の検査を行っている。エントリーした10人ともに、小腸には病変を認めず、健康状態に問題なかったため、同年12月より内服薬の投与を開始した。1週間NSAIDsを内服した後、胃腸障害を訴えたボランティアが6人いたが、出血、薬剤アレルギー等の重大な副作用は発生していない。 現時点では、研究の半分が終了しているが、randomized、前向き、ダブルブラインド、クロスオーバー試験であるため、結果の評価はできない。1クルー目終了した段階では、カプセル内視鏡で観察した範囲には胃潰瘍は認めなかった。しかし、小腸病変は4割のボランティアに認めている。 一般に報告されているNSAIDs内服中の患者において、小腸潰瘍・腸糜爛等の病変を認める確率は、およそ7割であるが、本研究の被験者においては、4割である。NSAIDs内服期間が1週間と短いため、一般の報告とは条件が違うが、大建中湯がNSAIDs起因性小腸病変を抑制する可能性が示唆される。
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