交感神系は中枢ストレス応答の出力の1つであり、その持続的な亢進がストレス関連疾患を誘起する一因であると推測されている。これまでに、ストレス関連ペプチド・CRFによる交感神経系賦活機構を解析する過程で、脳内一酸化窒素合成酵素(NOS)およびシクロオキシゲナーゼ(COX)がいずれも交感神経系亢進持続に促進的に関与することを報告してきた。しかし、ストレス下の交感神経系亢進においても、両酵素が亢進持続に関与するかは不明である。そこで本年度は、拘束ストレスモデルを用いて、逆行性トレーサーにより標識した下行性交感神経線維細胞体におけるNOSおよびCOX発現を形態学的に解析した。下行性交感神経線維を標識するため逆行性トレーサーを微量注入したラットに、急性の拘束ストレス(30分、1時間および2時間)を負荷した。拘束ストレス後に脳組織を採取し、神経活動のにマーカーであるFosと誘導型NOS(iNOS)、神経型NOS(nNOS)、COX-1もしくはCOX-2に対する二重免疫組織染色を行い、視床下部室傍核(PVN)および青斑核に存在する下行性交感神経線維細胞体での各アイソザイムの発現を計測した。その結果、PVNにおいては、下行性交感神経線維細胞体(FG陽性)のうち、Fos/iNOS、Fos/COX-1およびFos/COX-2を共発現した細胞数が有意に増加した。一方、Fos/nNOSを共発現した細胞数には変化はなかった。以上の結果から、拘束ストレスによる交感神経系亢進にiNOS、COX-1およびCOX-2が関与する可能性が示唆された。 また、ストレス反応を調節する因子としてエストロゲン及びオキシトシンに着目し、エストロゲン・オキシトシンによるストレス反応調節に関する予備実験として、拘束ストレスを負荷したエストロゲン受容体βおよびオキシトシン受容体ノックアウトマウスの脳内の形態学的解析をすすめている。
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