半夏瀉心湯と桂枝加芍薬湯は用量依存的にラット遠位結腸輪走筋における自発収縮の発生を抑制した。この抑制効果の一部は一酸化窒素の産生を介するものであった。さらに、半夏瀉心湯にはコリン作動性神経由来の収縮反応に対する非常に強い抑制効果が認められたことから、半夏瀉心湯が潰瘍性大腸炎やクローン病などにおける激しい下痢に有効である可能性が示唆された。一方、桂枝加芍薬湯のコリン作動性神経由来収縮反応に対する抑制効果は、半夏瀉心湯の抑制効果に比べると非常に弱いものであり、このような興奮性神経の機能に対する温存効果が、桂枝加芍薬湯が便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群に有効である理由の一つなのかもしれない。
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