研究概要 |
肝硬変時の蛋白質・エネルギー低栄養状態や肝予備能の改善させるために,多分化能を有する脂肪由来性幹細胞(ADSC)を骨格筋へ移植・分化させ,肝機能代償能を持つ骨格筋量を増加させることによる新しい代替治療法の確立を目指した研究を行っている。当初の計画では,移植した細胞をホスト組織で同定しやすくするために,GFPトランスジェニックマウスより採取したADSCをC57BL/6Nマウス骨格筋へ移植する予定であった。しかし,ADSC分離の依頼先よりヒトADSCが入手できたため,今研究では,ヒトADSCをマウス骨格筋へ移植する方法に変更した。また,ヒトとマウスの種間の免疫の違いを解消するため,ホストとしてヌードマウスを用いることとした。今年度は,ヒトADSC1×10^5個/10μLを,下腿骨格筋(腓腹筋)に計6箇所移植し,10週間後に骨格筋への分化度について確認した。対照として,ヒト骨格筋培養細胞も同時に移植し,ADSCとの分化度について比較した。採取した骨格筋は,現在,組織学的に検討している。また,ヌードマウスでの肝硬変モデルの作成を,5-10%四塩化炭素腹腔内投与(2回/週)にて検討し,10%にて5週間投与で,血清アルブミン値が2.85g/dLに低下する事を確認し,今研究に用いる疾病モデルを設定した。さらに,ヒトADSCを培養し,形態的に筋管へ分化することが確認でき,今後,分化メカニズムについても応用できる可能性が期待できる。
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