従来、鍼刺激により感覚神経末端での軸索反射を介して神経終末からSPやCGRPなどの血管拡張物質が放出されることによって刺激局所の血管拡張反応が起こると考えられているが、近年、一酸化窒素(NO)の関与についても示唆されている。本年度は賊刺激による皮膚血管拡張反応へのNOの関与を検討した。実験は健康な若年男性8名を対象とし、皮内マイクロダイアリシスを用いてNO合成酵素阻害薬であるN^G-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩(L-NAME)をシリンジポンプを用いて皮内へ投与し、鍼刺激による皮膚血管拡張反応への影響を検討した。1つのマイクロダイアリシスプローブにはL-NAMEを投与し、もう1つのプローブにはコントロールとしてリンゲル液を投与した。鍼刺激は2本のマイクロダイアリシスプローブの2mm近傍に10分間の置鍼を行った。鍼刺激による皮膚血管拡張反応への影響をL-NAME投与部とコントロールとで比較検討した。皮膚血流画像はレーザー血流画像化装置を用いて前腕内側で2cm×5cmの範囲を1分毎に連続測定した。皮膚血流は単位面積(サイト数)あたりの平均値を平均血圧で除した皮膚血管コンダクタンス(CVC)を評価した。鍼刺激直後に皮膚血流はピーク値に達したのち減少し、約30分後にプラトーに至る傾向を示した。L-NAME投与部ではコントロールにくらべてCVCの経時変化に有意な減弱が認められた(P<0.05)。鍼刺激後のCVCのピーク値でもL-NAME投与部ではコントロールにくらべて有意に低値を示した(P<0.05)。以上の結果から鍼刺激による皮膚血管拡張反応にはNOが部分的に関与していることが示唆された。
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