研究概要 |
悪液質は食欲不振と逆説的なエネルギー消費の増加による除脂肪体重と脂肪重量の減少からなる代謝障害で,癌,AIDS,心不全,腎不全,炎症性疾患など様々な病態によって引き起こされることが知られている.近年グレリン及びグレリン受容体作動薬の投与によって悪性腫瘍性悪液質による摂食量低下と除脂肪体重の低下を改善することが報告されている,一方,わが国で上部消化管症状の改善薬としてその効果が認められて使用されてきた漢方薬である六君子湯は,5-HT2受容体拮抗作用を介したグレリン作動性の食欲不振改善作用を持つことが明らかとなっている.本研究では悪液質による食欲不振に対する六君子湯の有効性の検討を行うことを目的とした.平成22年度は実験の方法を変更した,まず,他のストレス性食欲不振モデルで実験を行った.実験はSprague-Dawley(SD)成熟雄ラットに六君子湯は1000mg/kg体重を17:00 hに経口投与,その後2時間アクリルチューブで拘束した後19:00 h-7:00 hの暗期12時間の摂食量を比較した.拘束ストレスによって減少した摂食量は六君子湯の投与によって有意に回復を示した.次にリポポリサッカライド(LPS)を使用した新たな実験を行った.六君子湯を18:00 hに1000 mg/kg体重を経口投与した後,LPS 250μg/kg体重を18:30 hに腹腔内投与した後19:00 h-7:00 hの暗期12時間の摂食量を比較した.LPS投与による摂食量の低下は認めたが,六君子湯投与によって有意な回復は認めなかった,LPSを100μg/kg体重に減量して同様の実験を行ったが,LPSによる摂食量減少が不安定であり,こちらでも六君子湯による有意な回復は認めなかった.
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