研究概要 |
組織幹細胞の発生過程における増殖・分化の分子メカニズムを詳細に解析することで、大量に得ることが困難な組織幹細胞をin vitroで培養・増殖し、再生医療へと応用するための知見を得ることが期待できる。組織幹細胞が存在し、疾患の治癒に適用が可能と考えられる臓器として肝臓があげられる。本研究では、肝発生初期における肝幹細胞の機能維持のための細胞間相互作用の解明を目指した。まず、胎生中期の肝臓の幹・前駆細胞マーカーとして知られるCD13やD1kを指標として初期肝臓(胎生9,10日胚)から細胞を分離し、解析を行った。その結果、初期肝幹・前駆細胞ではアルブミンやαフェトプロテインといった遺伝子群の発現が胎生中期の細胞に比べて低い一方で、Sox17といったより未分化な内胚葉系細胞のマーカー遺伝子の発現が上昇していた。 肝発生初期のCD13+D1k+細胞をコラーゲンコート上で培養したところ、胎生中期の細胞で見られるような大型のコロニー形成を行わなかった。そこで、マウス胎仔繊維芽細胞との共培養を行ったところ、初期肝臓由来CD13+D1k+細胞から、アルブミンおよびサイトケラチン19両陽性の大型のコロニーが複数形成され、多分化能と自己増殖能が示された。初期肝臓幹・前駆細胞は、その増殖には間葉系細胞との相互作用が重要と考えられる。
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