腸管上皮細胞の分化調節制御システムの破綻が、重篤な増殖・分化障害による組織再生不全、あるいは異常増殖能獲得による癌化機構と密接に関わっている。特に炎症性腸疾患などの慢性、難治性炎症疾患においては腸管の免疫調節機構破綻による持続炎症だけでなく杯細胞減少、パネート細胞過形成など腸管上皮分化異常も病態の一因とされているが、その分子基盤は全く確立されていない。そこで、申請者は腸管上皮細胞分化遺伝子であるbHLH型転写因子Atoh1(マウスホモログ;Math1/ヒトホモログ;Hath1)の機能に着目し、本研究ではHath1制御による形質発現制御をパネート細胞形質に特化し、形質発現制御による消化管バリアー機能を主眼とし、その制御破綻による難治性慢性腸炎の発症、慢性化、難治化の成因を解明することで新規治療法開発への基盤とするものである。 本年度の成果として1)Hath1制御におけるパネート細胞形質発現解析においては、Hath1が抗菌物質であるHD6の発現を上昇させ、さらにプロモーター解析にてHD6プロモーターのE-box配列を介して直接転写活性を亢進させることを明らかとした。2)パネート細胞分化シグナル伝達機構解析においては、ヒト小腸細胞株を用いて各種シグナル刺激を行いFGF刺激にて抗菌物質の産生亢進することを発見した。3)抗菌物質産生による消化管バリアー機能解析してはマウス小腸初代培養系を確立しさらにフラジェリン刺激における小腸細胞反応の解析を可能とした。以上よりパネート形質発現機構について詳細な分子メカニズム明らかにするなど多大な成果を挙げた。
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