C型肝炎ウイルス(HCV)トランスジェニックマウスでは加齢に伴い、脂肪肝・肝細胞癌を高率に合併する。本マウスでは耐糖能異常、肝臓での酸化ストレス増加も観察され、C型慢性肝炎患者の病態を比較的忠実に反映している動物モデルと見なされている。これらの病態に中枢的に作用しているのがPPARα活性化である。よってそれを促進させる物質(飽和脂肪酸など)、あるいはその抑制剤(エイコサペンタエン酸(EPA)やベザフィブラート)の長期投与により、肝細胞癌の発症率が変化するのではないかと考えた。本研究の目的は、HCVトランスジェニックマウスに対し、臨床投与相当量のEPAやベザフィブラート、あるいは飽和脂肪酸食の長期投与(約18ヶ月)にて発癌率が変化するかを解析することである。 本年度での主な研究内容は、マウスの調製と薬物・特別食投与の開始であった。6月までにオスのトランスジェニックマウスを約60匹調製できたので、これを4群(各15匹ずつ)に分類し、通常食投与、通常食+EPA投与、通常食+ベザフィブラート投与、飽和脂肪酸食投与を開始した。全てのマウスは生存しており、幸い大きなトラブルはない。飽和脂肪酸食投与群ではコントロールに比し体重が増える傾向にあり、脂肪肝の増悪が予想される。現在の実験を継続すると共に、今後さらに多くのマウスが用意できれば、高コレステロール食投与、通常食+ピオグリタゾン投与の2群を新たに設定し、研究を発展させる予定である。 自身の留学に伴いマウスの管理を当該教室の青山俊文教授にお願いしたが、データ解析・報告は研究代表者が責任を持って遂行する。
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