近年、スフィンゴ脂質が種々の細胞機能の調節に重要であることが明らかにされている。スフィンゴ脂質代謝の鍵酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)は、細胞死やサイトカイン分泌などに関与するとの報告がある。肝臓においてもASM欠損マウスでは、肝細胞のアポトーシス感受性が低下しているとの報告もなされている。昨年度までの研究結果より、クッパー細胞は慢性肝障害において重要な役割を果たしていることを明らかにした。そこで、クッパー細胞のASMの役割を検討するため、クッパー細胞をASM欠損細胞に入れ替えたマウスを作製した。ASM欠損マウスより単離した骨髄細胞を野生型マウスに移植し、生着を待ってから部分的胆管結紮術を施行した。術後10日目に胆管結紮による肝障害、肝線維化、抗アポトーシス獲得効果、肝細胞増殖について、野生型マウスの骨髄を移植したマウスと比較を行った。クッパー細胞をASM欠損細胞に置き換えたマウスでは、胆管結紮による抗アポトーシス獲得効果および肝細胞増殖効果が減弱していた。一方、肝障害と肝線維化については差を認めなかった。このことより、クッパー細胞の慢性肝障害における役割のうち、肝細胞に対する抗アポトーシス獲得効果と肝細胞増殖効果については、ASMが必要であることを明らかにした。
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