研究課題
1. 原発性硬化性胆管炎(PSC)の肝移植後症例の臨床像の解析これまで京都大学にて施行されたPSCに対する肝移植症例30例の臨床像についての詳細な解析を行った。まず、グラフト生存と再発の現状について解析し、その後グラフト生存とPSC再発に関与する危険因子の解析を行った。その結果、単変量解析(logrank test)と多変量解析(Cox regression analysis)の両方で有意差をもって同定されたPSC再発のリスクファクターは、血縁ドナーであること、周術期のサイトメガロウイルス(CMV)感染症、の2つであった。グラフトロスに関与する因子の解析から、年齢が低いことが唯一のリスクファクターとして同定された。2. 原発性硬化性胆管炎(PSC)の肝組織における遺伝子発現の網羅的解析これまで京都大学にて施行されたPSCに対する肝移植症例30例の中で、典型的なPSCの臨床像を示し、若年発症かつ潰瘍性大腸炎合併例10例について、摘出肝組織(凍結標本)よりRNAを抽出した。さらにコントロールとして、正常肝(ドナー肝)、ならびに同様に胆汁うっ滞性肝硬変を呈する原発性胆汁性肝硬変(PBC)の肝移植症例の摘出肝、それぞれ10例ずつからRNAを抽出した。抽出したPSC、PBC、正常肝の3種のRNAを使用し、肝臓内でのmRNAの発現状態の違いについて、マイクロアレイ法を用いて網羅的に解析を行った。その結果より、正常肝やPBCの肝組織にて発現を認めず、PSC特異的に発現している遺伝子の探索を行い、PSC特異的に発現している可能性のある遺伝子候補を10個同定した。現在これらの遺伝子について、複数例のPSC症例ならびにコントロールの肝組織にて発現の確認を行っている。
すべて 2009
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Dig Dis Sci. 54
ページ: 1347-1354