研究課題
膵癌・胆道癌はきわめて予後不良であり、その発癌機序の解明、早期診断法、および新規治療法の確立が急務である。これまですでに膵癌・胆道癌における新規癌抑制遺伝子RUNX3の機能解析により膵癌・胆道癌細胞株の約70%の細胞株においてRUNX3の発現が消失しており、発現低下の機序として、RUNX3 Exon1領域のDNAメチル化が関わることを明らかにしてきた。さらにRUNX3発現が消失した細胞株にRUNX3を強制発現させると、p21の発現誘導を介して細胞周期が停止することを示した。以上より、RUNX3が癌抑制遺伝子として膵癌・胆管癌発癌に大きく関わることをあきらかにした。これをうけ本研究ではRUNX3メチル化検出の癌診断マーカーとしての臨床的有効性を示し、治療への応用をめざすことした。平成21年度の研究では、胆汁を検体として用いてRUNX3メチル化検出が可能であることを示し、胆汁を用いた早期癌診断の可能性が示唆された。さらに、胆道癌細胞において新規ヒストン脱アセチル化阻害剤を用いることによりRUNX3の発現が回復することを見出し、TGF-βシグナル伝達が活性化することを介して抗腫瘍効果を発揮することを示した。胆汁中のRUNX3メチル化検出が、新規治療の効果予測マーカーとなりうることが示唆される。これらの結果をうけ今年度は引き続き胆汁・膵液中のメチル化を効率よく検出する技術開発および、その臨床的意義について検討をおこなっていく予定である。
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Anticancer Research 29
ページ: 2619-2625