進行膵臓癌に対する塩酸ゲムシタビン(GEM)併用WT1ペプチドワクチン化学免疫療法臨床試験の遂行とその免疫学的動態解析 手術不能進行膵臓癌に対するGEM併用WT1ペプチドワクチン療法臨床試験に参加された症例より経時的に採取された血液サンプルを用い、以下の解析を行った。尚、症例集積は2010年9月で完了した。 (1)GEMとWT1ペプチドワクチン併用による免疫系全体に与える影響の解析 末梢血中のCD3+CD8+T細胞、CD3+CD4+T細胞、Treg細胞それぞれについて、治療経過中の経時的変化を解析した。CD3+CD8+T細胞は、治療中一時的な低下を認めた。一方、CD3+CD4+T細胞、Treg細胞はいずれも治療経過中、有意な低下を認めなかった。以上の結果は、GEM化学療法による免疫系への影響が軽微でありWT1ペプチドワクチン療法との併用は問題なく施行可能であることが示唆された。 (2)GEMとWT1ペプチドワクチン併用によるWT1特異的抗腫瘍免疫の免疫学的動態解析 GEM併用WT1ペプチドワクチン化学免疫療法臨床試験に参加された症例の末梢血サンプルを用い、テトラマー法マルチカラーFACSでWT1特異的細胞障害性T細胞(WT1tetramer+CD3+CD8+T細胞)ならびにそのphenotypeの経時的な動態解析を行った。CD3+CD8+T細胞中のWT1tetramer+CD3+CD8+T細胞の割合は、WT1ペプチドに対する免疫反応を認めた症例では、免疫反応を認めなかった症例に対して高い傾向があったが、統計的有意差は認めなかった。一方、WT1tetramer+CD3+CD8+T細胞中のmemory phenotypeの割合は、WT1ペプチドに対する免疫反応を認めた症例では、免疫反応を認めなかった症例に対して治療前そして治療経過中も有意に高かった。12ヵ月以上の長期生存例では、このmemory phenotypeの割合は、治療前そして治療後も特に高く維持されていた。WT1tetramer+CD3+CD8+T細胞、特にmemory phenotypeが高く維持されることが、膵臓癌患者の臨床効果と関連し、本治療法有効性のprediction markerとなることが示唆された。
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